第五部:有機化学の基礎 FRP・ゴム・繊維・塗料など

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  ここでは,JIS K 7010 に規定される基本的な FRP 関連用語に関連し, 【 FRP関連の一般的な用語】, 【強化材に関する用語】, 【樹脂に関する用語】, 【添加剤などに関する用語】, 【成形法に関する用語】 に項目を分けて紹介する。

   FRP関連の一般的な用語

 JIS K7010 「繊維強化プラスチック用語: Vocabulary for fibre reinforced plastic 」に規定される用語を抜粋して紹介する。
 ガラス繊維強化プラスチック( glass fibre reinforced plastic ):ガラス繊維を強化材とし,熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料。略称 GFRP。
 強化プラスチック( reinforced plastic ):その組成の中に埋め込まれた高強度繊維を伴うプラスチックで,その結果として基盤樹脂よりはるかに優れた幾つかの強度特性を生じている。
 繊維強化熱可塑性プラスチック( fibre reinforced thermoplastic ):マトリックスとして熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック。略称 FRTP。
 繊維強化プラスチック( fibre reinforced plastic ):各種繊維を強化材とし,熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料。略称 FRP。
 繊維強化複合材料( fibre reinforced composite material ):各種の繊維強化材と各種のマトリックスとの複合材料。
 炭素繊維強化プラスチック( carbon fibre reinforced plastic ):炭素繊維を強化材とし,熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料。
 備考 前者を CFRP,後者を CFRTP ともいう。
 ハイブリッド複合材料( hybrid composite material ): 2 種以上の繊維,粒子,フレークなどを強化材とする複合材料。
 複合材料( composite ,composite material ):
 (1) 結合材料(マトリックス)と微粒子又は繊維状材料を含む,2 又はそれ以上の異なる相からなる固体製品。
 (注) 例:強化繊維,微粒子状充てん材又は中空球を含む成形材料。
 (2) 接着剤中間層を伴う又は伴わないプラスチックフィルム又はシート,標準又はシンタクチック発泡プラスチック,金属,木材,定義 1 に従う複合材料,などの 2 層又はそれ以上の層(多くの場合は対称組立の形で)からなる固体製品。
 (注) 例:包装用フィルム複合材料:構造用サンドイッチ発泡複合材料,紙,布などで製造した積層品。

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  強化材に関する用語

 JIS K7010 「繊維強化プラスチック用語: Vocabulary for fibre reinforced plastic 」に規定される用語を抜粋して紹介する。
 編物( knitted fabric ):織物用ガラス糸のループの編み合わせによって製造する平面又は円筒状の組織物。
 あや(綾)織( twill weave ):織り方の一つで,縦糸と横糸の浮きが斜めに続いて斜交線を作る織り方。
 アラミド繊維( aramid fibre ):芳香族ポリアミドを成分とする繊維。
 アルミナ繊維( alumina fibre ):アルミナ (Al2O3) を主成分とする繊維。
 ウィスカ( whisker ):短い,繊維状の,単結晶の,無機の強化用材料。
 織物( woven fabric , fabric ):織機 ( loom or weaving machine ) で製織中に形成される交錯物のように互いに垂直に又は幾らか異なる特定の角度に二組の糸類(単糸,もろより糸,又はケーブルヤーン類,ロービング類)を交錯させながら製造するガラス繊維織物。
 ガラス繊維( glass fibre ):ガラスを溶融紡糸し,繊維化したもの。
 備考 強化材,電気絶縁材などに使用される長繊維,断熱吸音などに使用される短繊維がある。組成的には E ガラス,C ガラス,S ガラス,耐アルカリガラス,石英ガラスなどがある。
 E ガラス繊維( E glass fibre ):アルカリ ( Na2O , K2O ) 含有率が 0.8%以下のガラス繊維。
 S ガラス繊維( S glass fibre ):高強度のガラス繊維。
 C ガラス繊維( C glass fibre ):アルカリ ( Na2O , K2O ) 含有率が 10%前後のガラス繊維。
 強化材( reinforcement ):プラスチック,ゴムなどの有機物質,金属,セメントなどの無機物質の強化に用いる繊維基材。
 高強度炭素繊維( high strength carbon fibre ):引張強さが 3000MPa 程度以上,引張弾性率が 200~250GPa の炭素繊維。
 備考 特性値の範囲は必ずしも厳密なものではない。
 高弾性率炭素繊維( high modulus carbon fibre ):350GPa 程度以上の引張弾性率をもつ炭素繊維。
 備考 弾性率が 600GPa 以上のものは超高弾性率繊維と呼ばれることもある。
 黒鉛グレード繊維( graphite grade fibre ):1700℃(又は 2000℃)以上の温度で処理され,黒鉛に近い構造の炭素繊維。
 炭化けい素繊維( silicone carbide fibre ):ポリカルボシランを主体とする複素鎖ポリマーを紡糸・焼成した繊維。
 炭素グレード繊維( carbon grade fibre ):1700℃(又は 2000℃)以下の温度で炭素化された炭素繊維。
 炭素繊維( carbon fibre ):実質的に炭素元素だけからなる繊維状の炭素材料。
 備考 分類呼称には,炭素の種類によって;狭義の炭素グレード繊維,黒鉛グレード繊維,活性炭素繊維,力学的特性によって;高強度,高弾性率,はん用タイプなど,及び原料によって;ポリアクリロニトリル (PAN) 系,ピッチ系などが慣用されている。
 中間弾性率炭素繊維( intermediate modulus carbon fibre ):引張弾性率が 280~350GPaで引張強さが 5000MPa 以上の炭素繊維。
 はん(汎)用炭素繊維( general purpose carbon fibre ):引張弾性率が約 140GPa以下の炭素繊維。
 ピッチ系炭素繊維( pitch-based carbon fibre ):ピッチ系前駆体から作られる炭素繊維。
 備考 ピッチには石油系ピッチ,石炭系ピッチ,合成ピッチなどがある。
 平織( plain weave ):縦糸と横糸が 1本ごとに交差する織り方。
 フィラメント( filament ):小さな直径で,かつ,連続とみなせる極めて長い長さの単一織物要素。
 不織布(ふしょくふ)( non-woven fabric ):機械的,化学的,熱的などで繊維を固着したり,絡み合わせたりして作られるシート状の構成物。
 ポリアクリロニトリル系炭素繊維( polyacrylonitrile based carbon fibre ):ポリアクリロニトリルを前駆体原料とする炭素繊維。
 ボロン繊維( boron fibre ):無定形ボロンを主成分とする繊維。
 備考 通常,タングステン線を心材とし,その表面に化学蒸着によってボロンを形成させたもの。
 無機繊維( inorganic fibre ):無機物質を主成分とした繊維。
 備考 ガラス繊維,炭素繊維,アルミナ繊維,炭化けい素繊維などがある。
 モノフィラメント,単繊維( mono filament ):商業上の織物操作においては糸として,又はその他の応用においては一つの実体として機能を果たすために十分に強い単一のフィラメント。
 有機繊維( organic fibre ):有機物質を主成分とした繊維。
 備考 木綿,羊毛,麻などの天然繊維,レーヨンなどの化学繊維,ポリアミド,ポリエステル,アラミドなどの合成繊維がある。
 ヤーン( yarn ):繊維素材の総称で,フィラメント又はステープルを用いて糸状にしたもの。

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  樹脂に関する用語

 JIS K7010 「繊維強化プラスチック用語: Vocabulary for fibre reinforced plastic 」に規定される用語を抜粋して紹介する。
 イソフタル酸系樹脂( isophthalic resin ):酸の一成分として,イソフタル酸を用いる不飽和ポリエステル樹脂。
 エポキシ樹脂( epoxy resin ):架橋し得るエポキシ基を含む樹脂。
 オルソフタル酸系樹脂( orthophthalic resin ):酸の一成分として,無水フタル(オルソフタル)酸を用いる不飽和ポリエステル樹脂。
 空気硬化性樹脂( air cure type resin ):空気に接する面が完全に硬化する樹脂。
 備考 特に不飽和ポリエステル樹脂に用いられる。
 空気非硬化性樹脂( non-air-cure type resin ): 空気に暴露されると表面の硬化が阻害され完全硬化しないタイプの樹脂。
 ジアリルフタレート樹脂( diallyl phthalate resin ):ジアリルフタレートを主成分とする熱硬化性樹脂。略称 DAP 樹脂。
 速硬化性樹脂( fast cure type resin ):ゲル化から最高発熱温度に至る時間の短い樹脂。
 低収縮性不飽和ポリエステル樹脂( low profile unsaturated polyester resin ):硬化収縮を小さくするための低収縮剤を配合した不飽和ポリエステル樹脂。
 テレフタル酸系不飽和樹脂( terephthalic polyester resin ):酸の成分としてテレフタル酸を用いる不飽和ポリエステル樹脂。
 軟質不飽和ポリエステル樹脂( flexible unsaturated resin , non-rigid resin ):常温における弾性率が約 70MPa 以下の不飽和ポリエステル樹脂。
 不飽和ポリエステル( unsaturated polyester resin ):後で不飽和の単量体又はプリポリマーと架橋反応し得る重合体連鎖中の炭素−炭素不飽和結合をもつことを特徴とするポリエステル。
 ビニルエステル系樹脂( vinylester resin ):エポキシ樹脂とメタクリル酸又はアクリル酸の反応によって得られるビニルエステルを単量体に溶解した液状の熱硬化性樹脂。
 フェノール樹脂( phenolic resin ):一般には,フェノール,その同族体類及び又は誘導体類のアルデヒド類又はケトン類との重縮合によって製造されるある部類の樹脂。
 フェノールホルムアルデヒド樹脂( phenol formaldehyde resin ):フェノールのホルムアルデヒドとの重縮合によって製造されるフェノール形の樹脂。
 変性エポキシ樹脂( modified epoxy resin ):変性して,他の機能を付与したエポキシ樹脂。
 ポリイミド樹脂( polyimide resin ):主鎖にイミド結合をもつ樹脂。
 備考 形体的には熱可塑性及び熱硬化性の 2 タイプがある。

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  添加剤などに関する用語

 JIS K7010 「繊維強化プラスチック用語: Vocabulary for fibre reinforced plastic 」に規定される用語を抜粋して紹介する。
 カップリング剤( coupling agent ):樹脂マトリックス(母材)と強化材の境界面における一層強い結合を促進し又は達成する物質。
 (注) カップリング剤は強化材に塗布,又は樹脂に添加,又はその双方が行われる。
 シラン処理( silane finishing ):ビニルシラン,アクリルシラン,エポキシシラン,アミノシランなどのシランカップリング剤を用いて強化材及び充てん材とマトリックスとの接着効果を高めるための表面処理。
 低収縮剤( low profile additive ):不飽和ポリエステル樹脂の硬化収縮を小さくするために配合される熱可塑性樹脂。
 備考 ポリスチレン,ポリ酢酸ビニル,飽和ポリエステル,各種ゴムなどがある。
 充てん材,フィラー( filler ):強さ,耐久性,作業特性,その他の性能を改質するため,又は価格を引き下げるためにプラスチックに加える比較的不活性な固体材料。
 表面処理剤( coupling agent ):強化材と樹脂との接着効果を高めるために用いる化合物で,同一分子の一端に強化材と反応するか,又は親和性のある官能基をもち,他端には樹脂と反応するか,又は親和性の官能基をもつ構造の化合物。
 備考 シラン系,クロム系,チタネート系などがある。

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  成形法に関する用語

 JIS K7010 「繊維強化プラスチック用語: Vocabulary for fibre reinforced plastic 」に規定される用語を抜粋して紹介する。
 圧縮成形( compression moulding ):閉じたキャビティの中の材料に圧力及び通常は熱を加える成形工程。
 あと硬化( post cure ):熱硬化性材料で成形した物品の硬化を完全にするための熱処理。
 一体成形( integral moulding ):二次接着や機械的接合を用いないで,部材の接合と同時に製品を一体で成形すること。
 遠心成形( centrifugal moulding ):乾燥した可融性粉末を入れている金型を高速度で 1 軸の周りを回転し,かつ,加熱によって重合体を溶融している間回転し続けることによって中空円筒形製品を成形する工程。
 オートクレーブ成形( auto-clave moulding ):型に材料を積層し,樹脂系シート,ゴムシートなどで包み,真空脱泡してオートクレーブ中で,不活性ガスによって加熱・加圧し成形する方法。
 加圧バッグ成形( pressure bag moulding ):雄型の代わりにゴムのような弾性体の袋に空気圧又は液圧を加えて成形する方法。
 回転成形( rotational moulding ):乾燥した可融性の微粉砕粉末が金型の壁面に向かって分布され,かつ,溶融する回転注型に類似の工程。
 減圧バッグ成形( vacuum bag moulding ):雌型の代わりに,ゴムのような弾性体を用い,雄型と弾性体との間の空気を抜き,大気圧で加圧する方法。
 コールドプレス成形( cold press moulding ):熱伝導率の小さな合せ型を用い,不飽和ポリエステル樹脂の硬化時に発生する反応熱を利用して硬化する成形方法。
 ストレッチ成形( stretch moulding ):枠には(貼)られた 2 枚のフィルムの間に繊維及び樹脂をサンドイッチし,脱泡,含浸した後,雄型を押し付け,フィルムの張力を利用して成形する方法。
 スプレーアップ成形,吹付積層成形( spray up moulding ):スプレーアップ装置を用いて,成形型に繊維基材を切断しながら樹脂と同時に吹き付ける成形方法。
 積層成形( laminate moulding ):積層品を構成する基材を接触圧,加圧・加熱などによって所定の形に成形する方法。
 接触圧成形( contact pressure moulding ):成形及び硬化の操作の間に最小の圧力をかける強化プラスチック成形品の製造工程。
 バッグ成形( bag moulding ):雄雌いずれか一方の型をゴムなどの弾性体のバッグとし,これに空気圧又は液圧を作用させて成形する方法。
 ハンドレイアップ成形,手積積層成形( hand lay up moulding ):繊維基材に樹脂を含浸させながら所定の形と厚さに手作業で積み重ねて製品を作る成形方法。
 引抜成形,プルトルージョン成形( pultrusion moulding ):繊維基材に樹脂を含浸させたものを金型内に引き込み,又は金型内で含浸させ,金型若しくは金型を出た所で加熱硬化して,硬化物を金型から引き出す成形方法。
 フィラメントワインディング成形( filament winding moulding ):樹脂を含浸した繊維基材を連続的にマンドレルに巻き付けて,主として円筒状の製品を成形する方法。略称 FW 成形。
 備考 巻き方によって,ヘリカル巻き,インプレーン巻き,パラレル巻き,ポーラ巻きなどがある。
 ブリード成形( bleede moulding ):プリプレグから成形する場合,加熱中に樹脂の一部を繊維基材の内部に吸収させ,製品の繊維含有率及び厚さの管理並びに空洞の除去を行う成形方法。
 プリフォーム( preform ):繊維基材を所定の寸法に切断し成形品の形状にバインダーを使って予備成形したもの。
 プリプレグ( prepreg ):成形の用意ができている樹脂(充てん材を伴う又は伴わない),添加物,及び織物状又は繊条状強化材の混合物。
 マッチドメタルダイ成形( matched metal die moulding ):金型の間に成形材料を入れ,金型を閉じて加熱加圧して成形する方法。略称 MMD成形。
 レジンインジェクション成形( resin injection moulding , resin transfer moulding ):合せ型内に繊維基材を置き,型に設けられた注入口から液状樹脂を圧入して成形する方法。略称 RI成形又は RTM。
 連続パネル成形( continuous laminating moulding ):離型フィルム上に触媒などを調合した樹脂,繊維基材を供給し,他方の離型フィルムで覆いながらロールで含浸脱泡を行い,所定の形状を保って加熱炉などで硬化し連続的に成形する方法。
 ローリング成形( rolling moulding ):シート状のプリプレグをローリング成形機によってマンドレル上に巻き付けて積層し,加熱硬化して筒状に成形する方法。

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