腐食概論腐食の基礎

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 ここでは,腐食と化学反応に関連し, 【腐食開始について】, 【主な用語】 を紹介する。

 腐食の開始と継続

 腐食開始について

 鋼などの多くの金属表面は,乾いた大気中で研磨し清浄な表面を作製しても,直ちに大気中の酸素と反応し数分子層の酸化物皮膜で覆われる。 同時に,大気中の成分(酸素,窒素,水蒸気,その他成分)も分子吸着する。
 これらの数分子層(ナノメートルオーダー)の酸化物被膜や吸着層を持つため,腐食開始・継続には,これらの障壁を含む活性化エネルギー(activation energy)を超えるエネルギーが必要になる。
 金属表面に緻密で安定した酸化物皮膜<が形成され,一般的な環境・条件では活性化エネルギーを超えられない場合は,ステンレス鋼などで見られるように,容易には腐食を開始しない。このような状態を不動態(passive state)といい,表面の被膜を不動態被膜という。

金属表面の欠陥(概念図)

金属表面の欠陥(概念図)

 一般的な結晶性金属の表面には,図に示すような結晶粒界(grain boundary)や転位(dislocation)などの構造欠陥(structural defect)がある。このため,欠陥部とその他の部位との間にエネルギー差(電位差)が生じる。
 すなわち,欠陥部とその他の部位との電位差に相当する電池が金属表面に多数生成(ミクロ腐食電池,局部電池などといわれる)することになる。
 このとき,欠陥部は,電位の高い状態のアノード(陽極)になり,その他の個所は,より電位の低い状態のカソード(陰極)となる。
 【反応速度定数とは】で示したように,カソード部とアノード部間の電位差(エネルギー差)が活性化エネルギーを超えられるほど大きい場合には,自然に腐食が開始する。
 アモルファス金属は,同じ成分組成の結晶質金属に比較して耐食性が高いことはよく知られている。これは,アモルファス金属の表面が均質で,結晶金属のような結晶粒界,格子欠陥,転位などの表面エネルギーの異なる微細な領域を有しないためと考えられている。

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 主な用語の概説

 アノード(anode)とカソード(cathode)
 JIS Z0103「防せい防食用語」では,“アノードとは,電流が電極から電解質に向かって流れ,酸化反応が行われる電極。陽極ともいう。カソードとは,電流が電解質から電極に向かって流れ,還元反応が行われる電極。陰極ともいう。”と定義されている。
 電極(electrode)
 電気化学では,広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。⇒ 【電気化学】
 腐食電池(corrosion cell)
 金属腐食の開始・継続に必要な金属表面の電位差を与える領域の状態をいう。
 なお,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をマクロ腐食電池(macro-galvanic cell)といい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
 ミクロ電池腐食(micro-galvanic cell corrosion)
 ミクロセル腐食,ミクロ腐食,均一腐食,全面腐食などともいわれ,鋼表面の表面状態,化学組成のわずかな違いから,微視的なアノード部とカソード部で構成されるミクロ腐食電池(micro-galvanic cell)が多数形成される。アノード部とカソード部の位置を移動しながら,全面が比較的穏やかで均一な腐食(全面腐食)を起こす。⇒ 【均一腐食】
 マクロ電池腐食(macro-galvanic cell corrosion)
 マクロセル腐食,マクロ腐食,局部腐食ともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されているマクロ腐食電池(macro-galvanic cell)の作用による腐食をいう。局部的な損傷の激しい腐食となるため,工学的に重要な腐食現象の一つである。⇒ 【局部腐食】

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